秋はすごしやすく、昼はよく働き、夜はぐっすり眠る・・・・・のはずなのに、眠れずにもんもんとすごす夜は長く苦しいですね。

中国漢方では心(しん)を神(じん・精神)のやどる臓器と捉え、心(しん)の神(じん)つまり精神の安定(安神)こそ、入眠・熟睡の条件であると考えます。

不眠症は大きく虚証型(きょしょうがた)と実証型(じっしょうがた)の二つに分けられます。

『虚(きょ)』とは不足や衰弱の状態です。よって虚証型(きょしょうがた)の不眠は慢性病・老化・過労・病後産後など栄養不足の状態でおこります。
症状は寝つけない、すぐ眼がさめる等の不眠と共に、のぼせ、手足のほてり、口渇(こうかつ)、頭のふらつき、 腰痛などあります。

一方、『実(じつ)』とは過剰(かじょう)・亢進・興奮の状態です。
よって実証型(じっしょうがた)の不眠は食べ過ぎ、飲み過ぎで体が熱っぽく興奮しやすく、またストレスでイライラしている状態でおこります。精神的ショックを受けた時もおこります。症状は寝つけない、夢が多い、食後眠たくなると共に、イライラ、動悸、胸が暑苦しい、目の充血、 不安感などがあります。

治療法は、虚証(きょしょう)の不眠は心身の消耗によるので、必要な栄養を補い体を潤して精神の安定を はかります。

漢方薬は、お年寄りの方は「天王補心丹(てんのうほしんたん)」、貧血、冷えの方は「帰脾湯(きひとう)」、胃腸虚弱の方は「星火温胆湯(せいかうんたんとう)」や「酸棗仁湯(さんそうにんとう)」がよいでしょう。

実証(じっしょう)の不眠は過剰による興奮なので、過剰分を体外へ排泄して心身を鎮静させます。漢方薬は、のぼせ症で血圧の高い方は「大柴胡湯(だいさいことう)」や「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」、ストレスでイライラする方は「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」、水分代謝の悪い方は「星火温胆湯(せいかうんたんとう)」がよいでしょう。
これらの漢方薬は、心身のバランスを整え、不眠を解消するので昼間眠くなりません。